神鶏とは伊勢神宮をはじめ、神社における神の遣いとされる鶏のこと。梅との組み合わせは縁起が良いといわれます。
蘇りし絶世の色調と細やかな描線
若冲が誇る驚愕の繊細な描写
■前代未聞の44万人という入場者数を記録した「若冲展」。生誕300年を迎えた2016年、孤高の天才画家・伊藤若冲の圧倒的な画力は世代を超えて海外にまで轟きました。この度ご紹介する『梅樹神鶏之図』は若冲の本領である鶏作品の真髄。自宅の庭に数十羽の鶏を飼って観察を続け、写生に没頭したという逸話があるほど、生命力みなぎる描写は他の追随を許しません。
■本作は14版20度摺りにて京都木版画の老舗・芸艸堂(うんそうどう)秘蔵の版を摺師・米田蔵造氏ほか、熟練の職人が手摺りで、歴史的傑作を克明に蘇らせました。浮世絵の伝統を残す当時の版木は原画の色彩や細かな描線(びょうせん)を忠実に再現。鶏の羽根や梅花の表現は江戸時代の作品とは思えない写実性を誇り、絶世の色調をなす薄紅、赤、茶、墨色は狩野派や中国の古画を独学で極めた天才の天才たる所以を伝えます。
■人間国宝・九代岩野市兵衛氏による越前奉書紙は作品の魅力を引き立て、金柄紋額(きんがらもんがく)は和洋問わず、空間を格調高く彩ります。明治期の版木を保有し、浮世絵版画の伝統技を継承する職人を擁す芸艸堂だから実現した傑作 ! 若冲展をご覧になった方も、残念ながら見逃してしまった方も花鳥図の天才の稀少作をこの好機にご所蔵ください。