揺れる少女の心理まで描き出した、繊細な表現力
守ってあげたくなる後ろ姿
■リボンの付いた可愛らしい麦わら帽子をかぶり、よそ行きのワンピースを着ておめかししたあどけない少女。外出先でどこかに腰を下ろし、退屈したかのように両足をクロスさせながら、お父さんお母さんの帰りを静かに待っているところでしょうか。
■ 「もう赤ちゃんじゃないんだから、一人でも平気よ」強がりながらも一時の不安を紛らわすため、大切な友達である小犬を、両腕でぎゅっと抱きしめてしまいま す。寂しさにふと仰ぎ見れば、遠くから笑顔の両親が。ようやく安堵し、硬かった表情も和やかな微笑に変わっていきます。愛らしく小首をかしげながら、「今 度は何をおねだりしようかな」と。
■本作品『小さな友だち』は、そんな少女の揺れる心の動き、愛犬に対する優しく温かな気持ちを、ブロンズ像の中に鮮やかにとどめた逸品です。
誰 もが一度は幼い頃に経験した日常の一コマを、作者・大道寺光弘氏はシャッターのように鋭い観察眼で切り取り、圧倒的な描写力と表現力でかたちにしていま す。ブロンズ像を前にした時、思わず微笑みがこぼれるのは、心の奥底に仕舞われた大切な記憶と、激しく共鳴する何かがあるからかもしれません。
腕の中で安心した子犬の顔
■詩情あふれる瑞々しい作風で、国内外のファンを魅了する大道寺氏。
その最新作こそ、本作『小さな友だち』です。何枚ものデッサンを描き、粘土を 用いた試作を繰り返した末に原型が完成した大道寺氏自慢の労作。一体一体のブロンズ像は、焦げ茶色の“アンティークな仕上げ”が施され、何とも柔和な雰囲 気を醸し出しています。少女が座っている台は、大理石の一種で緻密な縞状構造を持つトラバーチン。作品の背面には作者の銘が刻まれています。
■卓越した創作力を持つ大道寺氏は、国内はもとより海外にも多くの愛好家を持ち、今後ますます評価が高まるであろう国際的彫刻家です。この好機にぜひお求めになり、末永くご愛蔵ください。