ルノワール『菊』
花瓶からあふれ出す“菊”の圧倒的存在感。
■この作品は大変珍しい作品です。「花を描けば右に出る画家はない」と賞賛される印象派の巨匠・ピエール=オーギュスト・ルノアールの作。この画面からあふれ出すような菊の花、一輪一輪に印象派を超えようとして新たな美を見出そうとしているルノワールのリアルな描写が息づいています。
■蠢くような赤系統の背景に、青・白・緑などで彩られたテーブルが浮かび上がり、さらにシンプルな花瓶から『菊』が活き活きと束になって咲き誇っている…。その花弁や葉ひとつひとつが今にも画面から零れ落ちてくるような様を克明に描写しています。まさに眼にした鑑賞者に劇的なまでの感動を与える“印象主義的表現”を超えたルノアール後期の傑作です。
オーギュスト・ルノワール 略歴
1841年、フランスのリモージュに生まれる。13歳の時から陶芸工房で絵付師の見習いとして修行しながら国立美術学校で学びが画家として一歩を生み出す。その後、印象派の代表的な画家として「浅敷席」「踊り子」などの傑作を発表、花など静物画のほか、裸婦像、少女像などの人物画を得意とした。独自の配色による 豊かな色彩を駆使して、晩年まで親しみやすい画風による約6000点もの作品を残す。1919年、78歳で死去。