当時の幕府体制を物語る3枚
■大飢饉(だいききん)が襲った天保期(てんぽうき)は江戸時代の中でもたいへん珍しい通貨が鋳造され ました。『天保小判金』は従来の手打ちではなく、ローラーを用いて鋳造(ちゅうぞう)されているのが特徴。幕府は金の品位を引き上げつつ、量目(りょうも く)を下げることによって多額の出目(貨幣改鋳益)を得たといわれます。
■貨幣価値が一分金と等価で、四分の一両に相当した『天保一分銀』も幕府が苦肉の策で鋳造した一枚。切り使いされた当時の丁銀一両分の6割にも満たない品位しかありませんでした。しかし、鎖国体制の崩壊に伴い、海外でも通用する銀貨鋳造のため鋳潰(いつぶ)されてしまったため稀少性は際立ちます。
■楕円形に四角い穴の『天保通宝』は世界で唯一の形状として知られます。江戸の金座(きんざ)で初めて 造られて以降、金、銀に次ぐ貨幣として通用しました。明治の陸軍大学卒業者の徽章(きしょう)が似た造形であることから分かるように、この一枚はステイタ スシンボルでもありました。天保期の名貨三枚。いずれも窮地(きゅうち)にあった幕府の苦しい財政を伝える逸品です。
桐箱に納めてお届けします