弘法大師空海由来の「五鈷杵」を御尊家へ
妙なる音色で除難・昇運を祈願する逸品
■五鈷杵とは密教における代表的な法具で、煩悩を破る悟りの智慧(ちえ)の象徴。弘法大師空海の像は左手に数珠、右手に五鈷杵を掲げる姿が描かれます。また、経典(きょうてん)には、五鈷杵を持つ者はあらゆる災厄を防ぎ、祈願を成就すると説かれています。
■本作品『佐波理五鈷杵』は、大日、阿弥陀、阿しゅく、宝生(ほうしょう)、不空成就(ふくうじょうじゅ)の五智如来(ごちにょらい)を表す五つの「峰 (みね)」を両端に持つ独特な形。さらに、両端は曼荼羅(まんだら)の金剛界(こんごうかい)と胎蔵界(たいぞうかい)を示し、全体で両界曼荼羅の功徳 (くどく)を表現します。
■素材は、古来より貴重とされる佐波理。佐波理とは銅と錫の合金で、奈良時代に大陸から伝来したと言われています。金色を帯びた白金のような輝きが実に華 麗で、思わず見とれてしまうほど。数珠などで擦るとシャランと良い音色で響くため、銅鑼(どら)などの鳴り物仏具に使われてきました。
■作者は井上広司(いのうえこうじ)氏。京都府伝統工芸師だった父の後を継ぎ、金工の名家・井上家の五代目として活躍する気鋭の彫金師です。御仏の蓮華座 を思わせる握り部分の精緻な彫金細工は、驚くほどの麗しさ。風格ある仏教美術品、ご尊家の安寧(あんねい)を祈願するお守りとして、ご愛蔵ください。