昭楽窯開窯110周年特別企画
イ:長次郎写『禿(かむろ)』
利休が常に手元に置いたお気に入り
ふっくらとした丸み、掌のなかにすっぽりと入る収まりのよさ。正面を故意にへこませ、土の質感を生かしながら全体に滑らかさを持つカセ肌の黄褐色が趣深い。『禿』の命名由来は丸みが禿頭に似たためか、あるいはの頭を撫で愛でる感触からか。利休が常に手元に置いたといわれるお気に入り。
■原作:長次郎■黒楽■ぐいみ寸法:高さ5×最大径6.2cm、重さ97g
ロ:長次郎写『太郎坊』
土を使った利休茶碗の典型的作品
数多の作品がある長次郎作で、特に名品といわれる代表作七種のなかのひとつ。信焼焼のような色合いで、赤い聚楽土の上に薄く白釉をかけ、やや腰が高い。千利休が愛宕山の太郎坊に送り、その後再び所持、千宗旦に伝えたとされる利休茶碗の典型的作品とされる。
■原作:長次郎■赤楽■ぐいみ寸法:高さ4.4×最大径6.5cm、重さ91g
ハ:長次郎写『次郎坊』
黒楽の理想型のひとつとされる逸品
赤楽・太郎坊と対をなすような黒楽・次郎坊。腰(胴まわり)の中央をくぼませ、丸みをもって手捻りで腰高に成形された黒楽の理想型とも称される逸品。全体にかけられた黒い釉薬は窯のなかで褐色に変化しながら、こすれたときに表面にできるカセという光沢の少ない鉄肌のような味わい深さが出る。
■原作:長次郎■黒楽■ぐいみ寸法:高さ4.8×最大径6.5cm、重さ92g
ニ:長次郎写『一文字』
長次郎外七種の一つに数えられる傑作
千利休から依頼され楽焼をはじめた長次郎の作品のなかで、代表作とされる七種のひとつ。利休から宗旦、その後名だたる人の手を渡り三井財閥を支えた実業家にして高名な茶人益田鈍翁(ますだどんおう)へと伝来した。やや腰を高くし、口元をわずかに抱え込んでいる利休茶碗の典型的な作品のひとつ。
■原作:長次郎■赤楽■ぐいみ寸法:高さ4.4×最大径6.5cm、重さ84g
新年を寿ぐにふさわしい茶碗
「朝賀」とは1月1日、天皇が大極殿で臣下から祝賀を受ける儀式のこと。初釜など、新年を寿ぐにふさわしい茶碗。全体を覆う黒い釉薬は、一般に朱釉と呼ばれる朱色の斑文の釉薬で、一入独自のもの。そのため「朱釉黒茶碗」とも呼ばれる。茶碗のなかでは小ぶりだがしっかりとした存在感がある。
■原作:楽家四代一入■黒楽■ぐいみ寸法:高さ4.6×最大径6.3cm、重さ107g
ヘ:光悦写『不二山』
白雪を頂く「富士」と唯一無二の「不二」
工芸、書画などあらゆる分野に才能を発揮し、日本のダ・ビンチと称される本阿弥光悦作。国産の焼き物で国宝に指定されている2点の1つが『不二山』である。白雪を頂く「富士山」のイメージと、窯のなかで偶然できた片身替の出来が2つとできない唯一無二の茶碗という意味も持つ。
■原作:本阿弥光悦(国宝)■黒楽■ぐいみ寸法:高さ4.8×最大径5.8cm、重さ90g
ト:光悦写『雨雲』
光悦の作品に共通する形式にとらわれない、丸みを帯びた豪快な作品。黒の釉薬に、ザラリとした土肌が斜めに走り、雨雲から雨が降り注いでいる光景が浮かぶ。光悦は『雨雲』を作るにあたって、どの方向から見ても違いがあり、しかも何度見ても飽きのこない作品を目指したという。
■原作:本阿弥光悦(重要文化財)■黒楽■ぐいみ寸法:高さ4.8×最大径6.3cm、重さ94g
チ:光悦写『加賀』
白い景色があり、見どころの多い茶碗
光悦の生家の本阿弥家は、刀剣鑑定の名家で、加賀前田家の厚い保護を受けてきた。命名由来はそれ故か。丸みの強い先行きの光悦赤茶碗としては異色の作品といわれ、腰にくっきりとした稜線(りょうせん)をつけた力強い作品。口部と胴部に刷毛の痕をみせた白い景色があり、見どころの多い茶碗。
■原作:本阿弥光悦(重要文化財)■赤楽■ぐいみ寸法:高さ5×最大径6.1cm、重さ92g
初代大樋長左衛門の名作中の名作
初代大樋長左衛門のあまりにも有名な飴釉楽茶碗。口部分が大きくうねり楕円状になって、口から胴部にかけて大きくそらせた不思議な形が印象的な作品。焼成中、酸素の量を調整する還元窯は飴茶碗より色がより黒くなる。随所に荒々しい斜めの削り跡があり、飴油楽焼の至宝といわれる。
■原作:初代大樋長左衛門■飴釉■ぐいみ寸法:高さ5.2×最大径6cm、重さ89g
■素材:木製、ガラス、ミラー(背面) ■寸法:高さ40X幅63X奥行17.5cm■扉は片面開き、天板・側面にガラス窓付 ■直筆木札付
漆黒と独特の姿が土のぬくもりを伝える
茶碗全体を覆う二重掛けされた漆黒の幕釉が、得も言われぬ風格をみせる。幕釉ならではの深遠な黒が量感あふれる肌を醸し、全体の厚づくりがさらに力強さをみせ、口縁から腰にかけてのおおらかな曲線が優美さも表す。漆黒と味わい深い独特の姿が、そのまま土のぬくもりを伝える。
■原作:九代大樋長三郎■黒楽■ぐいみ寸法:高さ4.5×最大径6.5cm、重さ102g
茶聖・千利休が創意・進化させた楽焼茶碗
三代佐々木昭楽
■楽焼は、桃山時代、樂家初代長次郎が開窯し、茶聖千利休の茶の湯の創意と美意識によって進化を遂げました。当時はまだ”楽焼”とはいわず”今焼”と呼称されていました。後世楽焼と呼ばれる所以は、秀吉が建てた聚楽第(じゅらくてい)の近くに居を構えていた樂家が、聚楽第付近の土を用いていたために”聚落焼茶碗”と呼ばれ、やがて”楽焼””楽茶碗”と称されるようになったといわれています。
第一級品の黒楽・赤楽の銘碗をぐいみに
楽焼の双璧、黒楽、赤楽